組織改善のインナーメディアプラットフォーム「ourly(アワリー)」を提供するourly株式会社は、2022年9月28日(水)に、「新卒大学生が内定後・入社後に感じる企業とのミスマッチを防ぐためには」というテーマのオンラインセミナーを開催いたしました。
登壇者には株式会社ビーウェル 専務取締役 白根 孝昭氏と、新卒採用コンサルタント 里見 直樹氏の2名にご登壇いただきました。モデレーターは弊社 執行役員/CSO 髙橋 新平が務めました。
パネルディスカッションでは、新卒学生が入社するまでの期間を「選考期間」「内定承諾」「入社前」の3つのフローに分け、企業が、学生の選考離脱・内定辞退・早期離職を防ぐにはどうすればよいのかを、ビーウェル様の知見をもとにディスカッションいたしました。
本記事では約1時間ほどのパネルディスカッションを、一部抜粋してご紹介します。
登壇者

白根 孝昭 氏
2002年香川県立 高松高校を卒業。2006年に株式会社ビーウェルを創業し、専務取締役に就任。2008年大阪市立大学 経済学部を卒業。
大阪市立大学在学時に大学時代の友人とともに株式会社ビーウェル創業。専務取締役を務める。高校、大学で年間30回以上のキャリア授業を実施しており、現在は大阪・名古屋の2拠点にて中小・零細・ベンチャー企業を中心に採用支援を実施している。

里見 直樹 氏
2017年、摂南大学(大阪)を 卒業し、大手人材会社に新卒入社。
その後、2017年10月に株式会社ビーウェルに中途入社し、2018年には梅田阪急百貨店ラジオパーソナリティ就任。
現在は新卒採用コンサルタントとして企業の人事部をサポートしている。
モデレーター

髙橋 新平
新卒で大手メーカーに入社。技術営業として都内の再開発案件に多数携わる。
その後、経営コンサルティングファーム ENERGIZE-GROUPに入社。4年間主にスタートアップ、ベンチャー、中小企業の事業コンサル、組織コンサル等に従事して独立。
2022年4月からourlyへ執行役員CSOとして参画。コンサル経験を活かした総合的な提案とツール活用が強み。
セミナー本編
選考のフィードバックを通じて、エンゲージメント向上に
——白根:企業の悩みとして、他社との差別化ができないということが挙げられます。学生としても、どの企業も一緒に見える、どうやっていきめていいかが分からないといった悩み相談が増えている傾向にあります。
選考中の離脱を防ぐためにできることは、選考通過者になぜ合格したのかをきちんと伝えることです。個人的なフィードバック、つまりどうしてその合格者に次の選考に進んでほしいのか、どういった点で自分の会社とマッチしているのか、という個別具体的な情報を伝えていくことが大事です。
一方で、学生に足りないMOREの部分を学生に諭すことも重要です。一歩踏み込んだフィードバックを行うことで学生は、この会社は自分のことをきちんと見てくれている、この会社だったら成長できそうだ、というイメージを描くことができます。
——髙橋:内定承諾はしなかったとしても、エンゲージメントは非常に高いということになりますね。フィードバックを伝えることによって次の面接で修正能力を図るということもあるんでしょうか?
——白根:修正能力も大切ですが、学生がフィードバックをどのように捉えてるのか、ということの方が重要だと思います。フィードバックをポジティブにとらえる学生は終わった後に御礼の連絡をくれます。そういった1つ1つのコミュニケーションでエンゲージメントが高まります。
——髙橋:学生の内定承諾を獲得するための内定の出し方や承諾までの期間のコツはありますか?
——里見:個人にカスタマイズした選考が主流になっていて、学生が入社した後に何を期待しているのかをきちんと伝えたうえで内定を出すことがポイントだと考えています。
会社があえて学生に課題を伝えて、その課題を解決していくために学生にどういう役割を担ってほしいのか、という想いを伝えることが重要です。最近は経営層が持つ課題と現場が持つ課題の認識の統一に取り組んでいる企業が増えていて、このような取り組みを人事が学生に伝えることは非常に大切だと思います。
企業の方からお話を伺う中で、ほめすぎ、良く見せすぎというのは逆に裏目に出てしまう会社が増えてきていることを感じます。
——髙橋:いいところばかり伝えていても入社後にギャップを感じて早期離職につながることもありますね。
——白根:入社後ギャップを減らすという点だと、現場体験はいれるべきだと思います。
例えば営業の会社でしたら営業同行だったり、BtoCの現場がある会社だったら現場研修もしくは内定者バイトといった形です。弊社でも入社前の長期インターンを推奨していて、基本的に半年以上インターンとして働いてもらっています。
——髙橋:内定者インターンができるような業務がない企業の場合、どのようなアプローチ方法があると考えますか?
——白根:そのような場合は、次年度の採用チームとして動いてもらうというのが最も効果的だと思います。採用業務に携わるのは、会社を知るということを意味し、社長や経営層に触れ合う機会も増えるので、会社理解が進むという点でとても良い方法だと思います。
「全社員が採用チーム」の意識で学生とコミュニケーションを
——白根:これらの問いに関してはコミュニケーションの一言に尽きると思っています。
内定者インターンもそうですが、結局は会社と学生のコミュニケーションの質・量をいかに担保できるか、というところがポイントだと思います。実際、この点に危機感を感じている経営者が多いと感じています。
以前は、2か月に1回程度は学生にコンタクトをとるようにしていましたが、今ではどうやって毎週連絡を取るか、というところに課題感が移っていると思います。近年は企業がウェブ上で簡単に学生と出会うことができるからこそ、以前よりも採用範囲が広がっています。
そこから発生する課題が、コミュニケーションをどのようにとっていいか分からないということです。いかにウェブコンテンツを使って日頃から学生と連携し、継続的なコミュニケーションを発生させる手段を創るかというのが課題の1つになっています。
一方で、人事担当の方がなかなかここに時間を割けないという問題に取り組むために、他社のサービスを活用するなどして学生とコミュニケーションが取れる仕組みを構築することが大切だと思います。
——里見:上手くいっている企業の考え方の特徴として、人事部がコミュニケーションを多くとる以上に全社員が採用チームという意識を持っている点が挙げられます。
オンラインの普及による若手層・中堅層・経営層など、幅広い層同士の接点の機会が増えているので、10月から3月の内定期間でフランクな交流会を開催することで、内定辞退・内定承諾取り消しを防ぐことができます。
もう1点は、企業が学生にオファーを送る母集団形成手法の、オファー型サービスに関するエンゲージメント向上です。内定を承諾した新卒生が学生のオファー業務を担うことで、学生が自社に興味を持ってくれたという成功体験になります。
また研修の一環として、学生に自社をアピールする方法を考えて採用活動に参画することで、自社理解や自社愛の形成に繋がると思います。
——質問:全社採用がない会社において取り組みを導入する際によくある落とし穴があれば教えて頂きたいです。
——白根:配属先に問題がないかは確認した方がいいと思います。
学生を配属させるときに、その学生が配属先の業務を経験したことがないと思っている以上に配属先が厳しく、早期離職につながるということはよくあるので、会社に対する学生の理解度を高める動きは入社前に行う必要があります。
入社してからでないと業務が体験できない現場の場合、社員とのコミュニケーションを取らせるなどの何らかの関わりを持たせるということは確実にしておくべきだと思います。仮に全社採用ができないとしても、現場とのコネクションを提供してタッチポイントを作ってあげることが大切だと思います。
入社後に学生の中でギャップが発生してしまっても、相談相手をつくっておくことが重要です。
——髙橋:事業部側の体験ができない場合、現場で働いている社員の声を聞く機会を与えるということですね。
——里見:採用活動において伝えているメッセージ性と、現場から届くメッセージ性が異なるということもあります。最近は特に、何をするのか以上に理念や人に注目する傾向があり、どんな人と一緒にどんな目的をもって働くかを重視している学生が増えています。
しかし、採用活動で聞いていた理念が現場社員には伝わっていないという事態が発生すると、学生の離脱につながってしまうと思います。逆に理念が浸透している会社に対しては、志望度が上がったと感じる学生が多いです。
現場も含め全社員が共通の理念を認識していることを、学生が感じる状態をつくることです。
——髙橋:人事としては、会社のいいところをアピールしたいという想いが先行すると思いますが、現場の人はそうではないと感じている部分もあると思います。両者にずれが生じてしまうと学生の不信感につながってしまうので、全社的に一貫したメッセージを学生に届けられるようにする必要がありますね。
メンター制度を活用して、新入社員の負担を減らす
——髙橋:新入社員の研修を行う際に気を付けることは何ですか?
——白根:学生が不安を口にできる環境を用意することが必要だと思います。
入社前後でギャップがない会社はほとんどないと思います。
共通していることは、学生から社会人になり物理的な時間の拘束や、知らない人に会う回数が増えることがしんどいということです。ここから生まれる不安・しんどさ・愚痴などをいえる相手がいないことに問題があります。
これらの発散先が社内ではなく社外になると「そんな会社辞めておきなよ」と言われ、離職につながるという流れがあります。
これを社内にする方法の1つが、仕事を教える人とメンタルケアをする人を分けるということです。よくあるメンター制度は、先輩社員が後輩社員に仕事を教えながらメンタルケアもするという制度ですが、メンターの社員に愚痴や不安は言えないんです。
日頃仕事で注意や指示を出している人に悩んでいることを聞かれても、メンター社員が悩みの原因になることがあるわけなので相談なんてできません。現場がある会社の場合、人事がメンターを担っている企業もあります。
——里見:入社後数年経っている社員にやりがいを聞いてみると「自分にしかできない役割を担うことができる」という回答が非常に多いです。なので、入社後に個人の目標を持たせてそれに対してフィードバックをする機会をつくることが大切なのではないかと思います。
上司が1人1人に対しての期待を持ったうえで、与えられた目標以上の個人目標を設定することで高いモチベーションが維持されるのではないかと思います。
——髙橋:組織に貢献している実感をどれだけ早期に作れるかによって、その後の成長スピードが変わってくるという話を聞いたことがあるので、目標のなかに組織に貢献できる項目もいれたらいいのではと思いました。
新入社員に採用業務を手伝ってもらうというのも1つの貢献実感だと思っています。入社直後はスキルや知識がないように思われがちですが、新卒だからこそ貢献できることもあると思うのでそれらを研修に盛り込むのも効果的なのではないかと思いました。
質疑応答
——質問:学生によって入社前に会社と関わりたい熱量は違うと思うのですが、おとなしい学生やバイトや遊びを優先したがる学生にはどのようにコミュニケーションを取ればいいですか?
——里見:参加必須のものと任意参加のものを分けて考えればいいと思います。個々人で柔軟に合わせる方法も1つあると思います。
——質問:入社前後のギャップを減らすことは大切だと思いますが、社内の課題や実態を伝えすぎることでエンゲージメントを下げる要因になることはありますか?
——里見:課題に対して、今具体的に動いている施策や今後どんな対策をしていくのかを明確にしている会社であれば学生の不安もそこまで大きくはなりません。
——質問:社内報は新卒を含め情報を発信するための重要なツールだと思うのですが、逆に社内報でのコミュニケーションに適さない情報やメッセージはありますか
——髙橋:適していないものはないのですが、社内報を運用するうえで企画しすぎないというポイントがあります。社員はよりウェットなコミュニケーションを求めている人が多いので、社長メッセージや理念などの硬い情報のみになってしまうというのは避けた方がいいと思います。
実際にourlyを利用している企業さんは、オフィス周辺のおすすめランチに関する情報を発信したりしていて、会社が伝えるべき理念などの情報との濃淡をはっきりさせています。